台南市の郊外に、日本人で帝国海軍の飛行士だった杉浦茂峰氏を祀る廟があります。
祀られているのは、海軍軍人で杉浦茂峰兵曹長(戦死後少尉に特進)です。
昭和19年(1944)10月12日、アメリカ軍のF6F艦上戦闘機と交戦した零戦は、勇戦したものの敵機の数の差もあり劣勢となりました。杉浦氏の零戦も攻撃を受け尾翼より発火し急降下。そのまま脱出すれば助かる可能性もあったのですが、地上にある集落を避ける為に再度上昇し、村はずれで爆発。脱出したものの機銃掃射で落下傘は破れ、地上に落ち戦死されました。
その後、村を戦火から救う為に自身の命を犠牲にしたことに感謝し、1971年になってから祠を建てたそうです。当時の祠は小さかったのですが、参詣者は絶えることなく日本からも多くの人が訪れました。1993年に現在の台湾風の廟が建てられて現在に至っています。廟では、朝には「君が代」、夕方には「海ゆかば」が唄われているそうです。
鎮安は鎮邪安民、飛虎は飛ぶこと(この場合は航空機か)、将軍は神と祀られた勇士のことなのだそうです。
御神体は帝国海軍の軍服姿です。後ろの2体は信者に請われて御神体の代理として家々に迎えられる為のものとのことです。神様(杉浦氏)がタバコが好きだったのかどうか分からないのですが、御神体の前にはタバコに火をつけて神様にお供えする台があり、参詣者は火をつけたタバコを供えていました。
祭壇横には杉浦氏の生前の写真もあり、軍人が祀られているということを改めて感じました。
富安宮に祀られる森川巡査は地元の為に尽くした人ですので、祀られるのも理解できるのですが(それでも凄いことです)、杉浦氏はこの土地とは関係のない人です。命を引き換えに住民を守ったとはいえ、一度の行動に対してここまで台湾人がしてくれることは、日本人として有難く思うと同時に非常に驚きを感じます。
鎭安堂飛虎將軍廟 臺南市安南區同安路127號