日本人として生まれ育った世代の想いを綴ったドキュメンタリー映画である。日本語世代の台湾人は、日本人として生まれ、日本人として生きてきた。その彼らを、戦後の日本政府は「捨ててしまった」。そして最初から何も無かったかのように、日本政府は台湾を無視した状態が続いている。彼らの怒りは、その一点にあるといっても過言ではない。
日本統治時代は(日本本土から来た)内地人と差別もあり、辛い思いをした方も多い。それでも日本時代を懐かしみ全否定することはない。あの時代があったからこそ、いまの自分があるという。
出演されている陳清香さんは言う「今の若い日本人よりも私は日本人です」。宋定國さんは今でも日本人の恩師の墓参を欠かさない。「とてもお世話になった、厳しかったが良い先生だった」と日本人教師の思い出を語る台湾人はとても多い。
ビルマで日本兵として戦った蕭錦文さんとは面識があり、とても親切にして頂いている。昔の話を伺うことも多い。以前、蕭さんのお父上の写真を見せていただいたことがある。写真館で撮影されたその写真は、着物姿がビシッと決まり、どこから見ても日本人だった。私などよりも、台湾にいる彼らの方がよほど日本人だと心から思う。
台湾を訪れる一般の観光客の枠からはみ出して、地方を巡り台湾各地の皆さんと個人的に交流を持つようになり、気が付いたら台湾に嵌ってしまった日本人は多いと思う。私もここ数年は、お世話になっているお爺さんお婆さんに会いに行く旅になっている。この世代の皆さんから、多くの貴重な話を聞かせて頂いてきた。これらの話を記録として残したいと、いつもどこかで考えていた。それを現実に映像として残してくれたこの映画に感謝している。
まだ台湾には日本人がたくさんいる。
彼らはかつて日本人だったのではなく、本当の日本人なんだと思う。政治的に厳しい状況に置かれている台湾、イザというときは遠くない将来、確実に起こると予想できる。
その時、「民主主義の」日本政府は、また彼らを見捨てるのだろうか。
http://www.taiwan-jinsei.com/
台湾人生 公式ウェブサイト
丁寧な文章ですね。